絶望した人々の最後の頼みの綱。
スパイダーの視線が、放浪者のブーツからバンダナへと移る。「ふむ。俺のお気に入りの…」スパイダーが放浪者に相応しい称号を選ぼうとエーテルを吸い込む。「…何でもない」「こいつでいいか?」放浪者は顎をしゃくって空を示すと、浮かんでいるリーフの破片の隣にあった空のエーテル缶を蹴り飛ばす。広大な星雲と塵の先にある星空が真っ赤に染まっており、ウォーマインドが攻撃をするたびに新たな星座が描かれる。「オールマイティのおかげだ。素晴らしい」と言うと、スパイダーは輸送船からひとりで降りた。「もっと… 安全な場所で会うこともできたはずだ」「俺と一緒にいるところを見られたくないのか?」「スパイダーは皆の友人だ。だがその友人同士が友人であるとは限らない」と言うと、スパイダーは放浪者を見た。「お前が俺のところに来るべきだった」「お前はいつも仲間を侍らせてるからな。いつ背中を刺されるか分かったもんじゃない」「逃げるから背中を晒すことになる」とスパイダーが身震いしながら言った。「全員にな」放浪者はしばらく何も言わず、不毛な大地を見渡した。小さな岩がいくつも空中に浮いている。その岩はゆっくりと互いを引き寄せると、ぶつかり、様々な方向に飛んでいく。中には、破壊という結末を通して合体し、ひとつになるものもある。彼はしかめ面を浮かべ、スパイダーに向き直る。「楽にしろ。この辺りには誰もいない」スパイダーは体を広げると、吸入器から強烈な煙を音を立てて吸い込む。完全に立ち上がると、放浪者がその影の中にすっぽりと隠れた。「隔離が… 必ずしも安全とは限らない」「何があっても友情とかいうやつが守ってくれるんじゃないか?」放浪者が聞いた。彼は指先を合わせて、両腕で三角形に似た形を作った。「あまり期待しないほうがいい、とにかく…」スパイダーの腹から耳障りな笑い声が波のように押し寄せ、足下の緩い土壌を通して振動を起こす。「慰めてほしいなら他の奴に当たることだ」「なるほど。お前は前回逃げようとした。そして失敗した。そして今度は隠れようとしている。忠告だ、そんなことをしても無駄だ」「隠れる? スパイダーは依頼し、待つだけだ。盤面は変わる。盤面は新しくなる。俺はプレイヤーじゃない。それぞれの駒に値段をつけるだけだ」「冷たい奴だ。世界が終わりに近づいてるってのに何もしようとしない」「終わりというのは観点の問題だ。破壊というのは時には…」彼は息継ぎをして続けた。「利益になる」「何も残らなかったらどうする? 皮と骨だけになったら?」「骨の中には必ず象牙が紛れてる」「馬鹿げてるな」スパイダーが息を吐きだす。「はっ」「お前を見ていると同胞を思い出す」と言うと、スパイダーは近くにあった小さな土の塊を掴む。「奴らは大嵐を見ていた、お前と同じようにな。怯えてきっていたよ」そう言って手に力を込めると、土の塊が圧縮され小さな山型になる。スパーダーが手を開くと、それがいくつかのパーツに分かれて空中に漂う。「だが我々は今ここにいる。どんな形であれ、生きてはいる」「そうだな。フォールン」「フォールンだとも。俺はいつも皆の人気者だ。ウィッチ、ケル、そして囁く者たち… 影や形は重要じゃない。俺の網は広大だ。そして俺は自分の価値を証明してきた。王たちは互いにやり合っていればいい。俺はその決戦の舞台を用意する」「ガーディアンのことを言っているのか? がっかりさせて悪いが、奴らは言ってみれば安酒だ」「安いということは柔軟性があるということだ。切羽詰まればさらに安く買い叩ける」「ああ」そう言うと放浪者はリュックサックの中からアウォークン製の小さな装飾箱を取り出した。「ところで、これで誰を探すつもりなんだ?」スパイダーが放浪者に近づき、彼のパーソナルスペースに足を踏み入れる。「選択肢だ。我が糸に絡まった者よ」そう言うと、スパイダーはその大きな手で箱を掴み取り、他の手でゴーストのシェルが詰まった袋を2つ放浪者に渡した。「その小さな箱を手に入れるのに地獄を見た。玉座でももらわないと割に合わない」放浪者の声は落ち着いていたが、顎の筋肉はまだ震えている。スパイダーがさえずり、震えが彼の体を走り抜ける。「それは無理だ。ただの鏡だからな。良い取引だった、友よ」巨大なフォールンが振り返ってその場を後にする。「とにかく… 使えない奴にはなるな」「選択肢とやらを見つけたせいで、過ぎ去った連中が挨拶しにきたりはしないよな?」「誰もスパイダーのことは気にしない」「そいつは幸運なことだ」
※計算式不明瞭につき大雑把な値です
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