Destiny2 デスティニー2 まとめ Wiki

まだ見ぬ悲しみを謳う。

エリス・モーンが静かに放浪者に近づく。放浪者は疲れ切った様子で大きなバッグに小さなバッグを詰め込んでいる。デレリクトのあちこちには使い果たした薄暗いかけらが落ちており、それがゆっくりと蒸発している。彼女は床からかけらを拾い上げると、燃えるような光でその割れた表面を照らした。光がその中で乱反射を繰り返している。彼女が崩壊したかけらを落とすと、床の編み目にぶつかって粉々になる。そしてまるでガラスのような反響音を轟かせた。
放浪者が転びかねない勢いでその音がした方向に急に向きを変える。そしてホルスターからトラストを引き抜こうとしたところで、安堵の波が一気に押し寄せる。「コソコソするなと教わらなかったのか？ 非常識だぞ」
「覚えておく。引っ越すのか？」
「出張だ。ところでどうやってここに入った？」
「エアロックが開いていた」
「ああ、なるほど」
「もし出世争いに飛び入り参加しに来たと言っていたら、もっと歓迎してくれたか？」
「はっ、どうだろうな…」
エリスが肩を落とし、放浪者に近づく。「力を借りたい」
「なるほどな」と言うと、彼は疑わしそうに眉間にしわを寄せた。「なぜだ？ もう宇宙は救ったんじゃないのか？」放浪者がバッグにバッグを詰め込む作業に戻る。
「まだ危機は脱していないようだ。正直に言うと、自分が力になれているかどうかも分からない」
エリスがバッグを渡す。「お前の知識が必要だ」
「お前が？ 嘘だな」
「このところ面倒なことが続いている」
「それが人生ってもんだ」
「どうしても知りたい」と彼女は言い、先ほどとはうって変わって、ためらいがちに続けた。「暗黒の言葉の解釈の仕方を教えてほしい」
「俺のことをどこかの薄汚れた狂った賢人だとでも思っているのか？ 出て行け。支度中なんだ」
「私を無視するな」とエリスは落ち着いた鋭い声で言った。「私たちは共に地下に眠るものを目にしたはずだ」
放浪者は手に持っていた袋を落とすと、作業台から翡翠のコインを拾い上げる。
「アシェルは自分の考えに固執している」とエリスは言うと、隣にある作業台の上に静かに手を乗せた。「イコラは… 彼女は頑張っている。彼女なりにな。ただ彼女は理解していない。誰も話を聞こうとしない」
放浪者はコインをポケットに入れると彼女の顔を見た。そしてジッと見つめる。「経験だ。それが何よりも重要だ」と言うと、彼はデレリクトの通路を見下ろし、ホールへと続くゲートを見た。「親切はタダじゃない。つまり俺に貸しを作ることになるぞ」
エリスがうなずく。放浪者は作業台の上を払うと、格納式の椅子を引っ張り出した。
「時間はどれぐらいある？」
2人は腰を落ち着け、話し合い、そして聞き合った。デレリクトが地球の軌道上を周回している間に、秘密のやり取りが行なわれ、光と闇の中で繋がりが生まれ、協定が結ばれた。2人はすぐに何も言わずに互いを理解できるようになっていた。
「次に月から出る時はブーツの埃をしっかり払えよ。おかげで床が砂だらけだ」
エリスは首を振るとエアロックに向かった。
放浪者が後ろから怒鳴る。「次は来る前に連絡しろ！ その三つ目を吹き飛ばすところだったぞ」
「これからはその偏屈な考え方にもっと気を配れるよう努力する」