Destiny2 デスティニー2 まとめ Wiki

静かに。密やかに。静粛に。

お前は夢のない長い眠りから覚めた子供だ。まだ今日なのか、あるいは明日まで寝ていたのか？ 明日、また明日へと眠り続け、月日によって砂のように埋められてしまったのか？ 優しい手が砂を払い除けるが、お前の声は小さく、彼らの心臓の鼓動の音にかき消されてしまう。
お前は月だ。体は重く、重く感じるが、空を眺める者が見るお前は重力に構わず空に佇んでいる。空を眺める者が呼びかけるが、お前は応えない。彼らはお前のために身を捧げ、お前を追うために夢を捨てる。お前は彼らを愛するあまり、それを咎めることができない。
お前は灯台守だ。お前は嵐雲が迫りくる中、眠りゆく海岸の村を見守る。お前は信号灯を彼らに向け、より早く、より明るく光らせるが、彼らは何もしない。島にある塔に囚われたお前は必死に「それ」の到来を警告するが、それでも彼らは逃げない。彼らは死んでしまう――そして、逃げなければお前も死ぬだろう。
お前は身を乗り出して海を眺めている。時々魚たちが指先に触れ、神聖なるものの存在を確信する。潮が引くと、魚たちはお前を有さない虚の空間からしかお前を知ることができない。そして、「それ」が到来した今、お前は必死に水に手を伸ばしている。お前はナイフのように水を分かつ鮫のその大きな影の到来を忠告できないが、それでもやらなければならない。何としてでも忠告しなければ。これ以上失うわけにはいかない。
お前は本の山を運んでいる。それらの題を1秒に1つ声に出して読んだとしても、宇宙の熱死までに言い終えることはできない。そして、毎年、毎日、毎分、「それ」は本の山をさらに高く積み上げていく。ある男が1冊の本を求め、お前に向かって手を伸ばしている。お前は彼の手を取り、お前もまた彼のように、石英に刻まれた記憶を永遠に背負わなければいけないのだと伝えることを渇望している。だが、お前は本から手を離すことができない。
お前は呼吸が困難になるほど窮屈な檻に閉じ込められた囚人だ。彼はお前に賜物を共有するよう罵声を浴びせるが、お前はそれを賜物だと思う者には決して与えたりはしない。それは重責なのだ。お前はすでにあまりに多くの者たちがその重荷に押しつぶされることを要求した。言いたいことは他にもあるが、お前は何も言わない。
お前は亀裂の先にある、動脈のように広がる数多の道に向かって手を伸ばす。お前は亀裂の反対側にいる者たちのところまでたどり着こうとしているが、亀裂を渡ることができない。お前は彼らがひとり、またひとりとお前に背を向けて深淵へと降り、やがて「それ」に完全に吸収されるのを眺める。そんな中、衰退の悪臭を放つひとりの流浪者が道を遡ってお前に向かって手を伸ばす。お前はその光景に驚愕する。
お前は溺れている。水が荒れ狂い、疲れ果てたお前を水中へと引きずり込む。深く暗い海がお前の肺に流れ込み、墨が銀の血液に混ざっていく。今回ばかりは「それ」の勝ちだと認めざるを得ない。だが上を見ると、お前に向かって水の中に飛び込んでくる姿が見える。その者は窒息させようとする波に抗い、お前がかつて幾度となくその者に手を伸ばしたように、お前に手を伸ばしている。
お前にはもう力が残されていないが、それでもやらなければならない。お前は胸に残された最後の息で手を伸ばす。そしてその手には、剣が握られている。