その悲惨な刃が跡を残した後のことは、誰も語ろうとはしない。
「グリント」「どうしました?」とゴーストは嬉しそうに答えた。クロウが最後にしゃべってから数時間が経っていた。「自分の嫌いなところはあるか?」クロウは木の上に座りながら振り返って言った。眼下には、トロストランドの川の流れによって分かたれた、樹木が生い茂る巨大な谷間が広がっていた。「おっと、それは難しい質問ですね。うーん… そうですね…」「内臓が引きちぎられそうな感覚がするのに、自分はただそこに立ち、それを引き戻そうとしている。だがもう元の位置には戻らない」 彼はかつて神に従い、内臓を鎖のように引っ張られていた。だが、彼はそれを自ら進んで受け入れていた。その思考はあまりにも現実離れしており、まるで恐ろしいほど詳細なまったく別の人生であるかのように描き出されていた。眩いほど明確な映像。それは厳しい現実の中で悪化した傷であり、彼はそれから目を逸らすことができなかった。「かなり具体的ですね」グリントは情報を処理しながらそう言った。 「あなたは… 本当に… それを元に戻す必要があると思いますか? もしかしたらそのままにしておいても大丈夫ということは?」「忘れてくれ」クロウが優しく言った。「質問を変えよう」「そうしましょう!」グリントが気まずそうに笑いながら言った。「あの槍だが…」クロウは一旦話を止め、考えをまとめてから再び話し始めた。「…サバスンがどこでユルドレンを見つけたにしろ、彼は常に私の中のどこかに存在していた。そうだろう? あの槍を使えばあそこに入れるかもしれない。そうすれば私の過去に足を踏み入れ… 彼の記憶を解放できる」クロウは深く息を吐くと、ぼんやりと地平線を眺めた。「彼を追い出したい。あの槍ならもしかしたら… できるかもしれない、なんて」「クロウ… そう上手く行くとは思えません」グリントはクロウが不安になるほど長く黙り込んだ。「クロウ、これまで私たちは一緒に悪いことをたくさん乗り越えてきました。でも、あなたは常に正しいことをしてきた。だから私はあなたに変わってほしいなんて思いません… ちっとも」グリントはそう言いながら、クロウの膝の間に沈んだ。「それに、過去の彼には私という存在はいなかった」
※計算式不明瞭につき大雑把な値です
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