「席が足りない」
格納庫に警報が鳴り響く。怯えた7人が脱出艇の開いた昇降口の側で身を寄せ合い、格納庫の開いた区画ドアを通り抜ける風に耐えている。 「俺を置いていくな!」エンジニアが叫ぶ。彼は若い男を人質に取り、万力のような腕を首に回す。銃を持つ手が震えている。 最後の生き残りの警備員は、同僚だった者を見下ろす。ずっと前に死亡して、床に血だまりを作っている。自分の銃に弾丸が何発残っているのか分からない。寒さで手が震えている。その手の震えは、上部構造を揺るがす爆発の反響のせいでもあった。 「乗せてくれ! 場所を空けろ! そこをどけ!」エンジニアはそう要求すると、銃で横を指し示す。警備員はその隙をついて発砲する。不安定な体勢で撃たれた数発は、エンジニアと人質に当たる。両者ともその場に崩れ落ち、背後の群衆が悲鳴を上げる。 警備員は罵り、人質を救おうと駆け寄る。背後で昇降口の扉が閉まる音がして振り返ると、脱出艇が動き出すのが見えた。彼は何かを叫ぶが、その声は途切れた。エンジニアは死んでいなかった。彼は、弾丸が脊髄に食い込んだことに気付く間もなく、倒れ込んだ。 凍てつくように冷たい床に横たわる彼の目に映るのは、格納庫の外に出た脱出艇。その目に涙が溢れる。彼が最後に見たのは、空から降り注ぐ一筋の光線。 脱出艇が軍事衛星に撃たれて破壊されるのと同時に、彼の心臓は動きを止めた。
※計算式不明瞭につき大雑把な値です
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