Destiny2 デスティニー2 まとめ Wiki

「光を道標にしろ」――ミスラックス

「銃はしまっておいたほうがいい」ウォーロックがそう言うと、仲間のハンターが誰もいないオフィスにふらりと入った。見事だと言わんばかりに長く口笛を吹きながら、彼はゆっくりとその部屋の中を見回した。
「司令官も随分と偉くなったもんだな」ハンターがそう言った。ショットガンはまだ肩に掛かったままだ。その時、彼は背の高い棚の上に何かあることに気づいた。「猫か？」
ウォーロックは部屋の中央に向かって彼を軽く押しやると、静かにショットガンを下ろすように彼に促した。彼女の手がバレルに触れ、その部分に氷で縁取られた跡ができた。ハンターを見る彼女の表情にはまだ余裕が見られたが、長くは続かなそうだった。
「この時間に会議の予定はなかったはずだが」入口から声が響いてきた。ウォーロックとハンターが振り返ると、そこにはザヴァラ司令官がいた。ハンターがショットガンを背後に隠すと、ゴーストがその武器の物質化を解いた。彼はザヴァラに向かって謝罪するように歪んだ笑顔を向けると、ウォーロックに向かって手を見せ、「銃？ 何のことだ？」というジェスチャーをした。
「ザヴァラ司令官」ウォーロックは一瞬、同僚に非難の眼差しを向けてから言った。「私は――」
「お前たちのことは知っている」とザヴァラは言うと、彼らの横を通った。「10分後に総意との会議が始まる。8分なら時間を割いてやれる」
「俺たちのことを知っていたぞ！」ハンターはウォーロックに囁いた。ウォーロックはこっそりと彼の横腹を肘でつついた。
「司令官。まず、エウロパでの救助活動について感謝を述べたい。今日はシティへのエリクスニーの移住に関する長期的な計画を確認したくて伺った」
ザヴァラは机の椅子に腰掛けた。その顔は疲れ切っていた。「長期的な計画はない。今のところはな」
「計画もないのに爆撃で焼き払われた土地に彼らを入れたのか？」ハンターが口を挟んだ。ザヴァラは驚きと苛立ちが混じった様な表情をしていたが、突然笑い出した。いつになく楽しそうなその笑い声は次第に大きくなり、やがて溜息へと変わった。
「そう見えるだろうな」とザヴァラが認めた。「総意が与えたこの土地は一時的なものだ。ただこのエリアはいずれ、エリクスニーと人間が自由に意見や文化、言葉を共有できる、コミュニティの学びの場になる予定だ」
「彼らはそのままあそこに住むことに？」ウォーロックが質問した。
「いや」とザヴァラは言うと首を振った。「全てが順調に行けば、彼らはシティに住むことになる。彼らの好きな場所にな。ただ彼らに与えたボッザ地区を改修するには時間が掛かるし、シティの住人も彼らをすぐには受け入れられないだろう。とにかく混乱と無知から暴力沙汰に発展することだけは避けたい」
ウォーロックとハンターは顔を見合わせ、再びザヴァラに視線を戻した。「それは… 想像していた以上に素晴らしい計画だ。あなたの計画にケチをつけたいわけではない、私はただ――」
「私の計画ではない」とザヴァラは言うと、入口で立ち聞きしていた女性のほうを見た。
「イコラ」ウォーロックがうやうやしく頭を下げて言った。

ウォーロックとハンターは彼女が現れたことに驚いていた。イコラは控えめに笑うと、部屋の中に入ってきた。
「ミスラックスの昔のファイアチームがシティに来たという話は聞いていたけど、まさか下ではなく、ここで会えるなんて」イコラはそう言ったが、そこまで驚いてはいないようだった。「彼にはもう挨拶を？」
「エウロパで起こったことを考え、それは賢明ではないと判断した。彼はまだ――まだ感情を抑えきれない部分があり、それに――現状を考慮すると、彼と接触するには手間が掛かる」ウォーロックはそう言うと、ハンターに心配そうな視線を送った。イコラは2人をしばし見つめると、うなずいてザヴァラに歩み寄った。
「家族内の問題は時として困難を伴う」イコラはそう言うと、ザヴァラの椅子の背もたれに手を乗せた。「それが繋がりの強い家族だとしても。ただ、あなたたちなら何とかできると信じている」
彼女は身を乗り出すと彼に何か囁いた。バンガード司令官は彼女に賛成の意を示すと、これから始まる会議のためにターミナルのウィンドウを開き始めた。
「話は変わるけれど、バンガードに協力するつもりはある？」イコラは片方の眉を上げて言った。ウォーロックとハンターは密かに視線を交わした、だが2人ともすぐに肯定を示すように静かにうなずいた。イコラはその答えを予期していたかのように笑うと、両腕を開いてザヴァラのオフィスから出るように2人を促した。
「分かった。シティの外に遠距離から監視任務に当たっている新米のハンターがいる。あなたたちには彼と一緒に任務に当たってもらいたい」とイコラは歩きながら言った。彼女が肩越しにザヴァラをチラリと見ると、ザヴァラが感謝するように笑顔を浮かべた。
「名前は？」ウォーロックが聞いた。
「それについては… 複雑な事情がある」