Destiny2 デスティニー2 まとめ Wiki

カレンダーにも終わりはある。

ナイスミスはヘッドランプの明かりだけを頼りに、右にある壁に手を当てながらじりじりと暗闇の中を進んでいた。スライム真菌の層が彼のブーツの下で湿った音を立て、岩場の狭い溝から水がうるさく流れている。
ケプラーには、ほとんど探索されていない峡谷や洞窟が無数にある。地質学者たちはこれらに多大な関心を持っている。今回の探索で論文の一つや二つは書けるはずだ。
だが、探索を計画するのと、レーダーマッピングできないほど深い場所にある狭い通路を一歩一歩進むのとは話が別だ。
ナイスミスの背後から正体不明の引っ掻く音が聞こえるなら尚更だ。
「この場所には、人間に危害を加えられるほど大きな動物は記録されていない」彼は揺らぐ明かりの中で、か細い声で自分に言い聞かせる。
引っ掻く音が大きくなっていく。ギギィィ。ギギ。軽くて短い音だ。
ギィィィィィィッ。ギィィ。
ナイスミスは前進するが、その速度は水の中を進んでいるかのようにゆっくりだ。時間が進むのを拒んでいるように思えてくる。
ギギギィィィィィッ。
引っ掻く音が長くなり、歪み始める。まるで録音を音程修正せずに半速で再生したような音だ。
ナイスミスはもどかしいほどゆっくり走り始める。
狭い通路が唐突に広がったかと思えば、見落とした石が彼の足をもつれさせた。ナイスミスは躓き、頭を地面にぶつける。彼は顔を上げ、漆黒の中を見つめる。
彼の視界がおかしくなったのではなく、ヘッドランプが壊れたのだと気付くのに少し時間がかかった。しかし、自分がどれだけ絶望的な状況に置かれているのか気付くのに時間はかからなかった。
ナイスミスは急いで立ち上がり、手探りで手を伸ばす。来た道を戻るための道しるべとなる壁はどこにもない。光もない。自分がどこにいるのか確かめる方法もない。
彼の後ろで、音がだんだん近づきながら、大陸棚の断崖から落ちていくように低くなっていく。
ギギィィィィィィィィィッ。
暗闇の中で、ナイスミスが悲鳴を上げる。