Destiny2 デスティニー2 まとめ Wiki

安らかに。

それはザヴァラ司令官が好きな色ではなかったが、糸は柔らかく、彼は編み針をカチカチと交差させながら素早く均等に編むことができた。
Kから目印へ、K1P1リブ編み、M1R、K、M1L、P1K1リブ編み、Kから目印へ。
この模様を編んだのは随分と久しぶりで、彼の筋肉記憶は薄れてしまっていた。ザヴァラはパターンが再び脳に定着するまで集中しなければならなかった。彼は記された指示に向かって目を細めた。ラグランが伸びていく。幅はうまく測れていただろうか？ いせるには緩すぎるかもしれない。襟ぐりが広すぎるように感じる。
そういった彼の思考が、高いピッチの機械音と、視線の片隅で光った白い閃光に遮られた。
ザヴァラは眉をひそめた。彼の傍にあるコンソールが点滅し、一連のデータを発信している。
彼は一瞬躊躇したが、編み物をやめなかった。
「イコラ？」彼は呼び掛けた。ウォーロックが視覚的なノイズと共に、ホロプロジェクターに現れた。
「こんにちは、ザヴァラ」イコラが温かく言った。「また編み物をするようになったのね」
「ああ。今、ネッススから警告を受信したのだが――」
「セイントとフェールセーフが対応しているわ」
「フェールセーフが？」
「ええ、フェールセーフよ」
バンガード司令官は緊張気味に糸を人差し指に巻いた。その動作で糸が細り、ピンと張られる。彼は再び糸を緩ませ、編み針を持つ手をリラックスさせた。
「では彼らの手腕に任せるとしよう。ああ、彼女の場合はプロセッサーか」
「それならよかった」
イコラはたしなめるように言ったが、ノイズの中で笑顔を見せた。ザヴァラが頷く。
「進展があったらまた教えてくれる？」イコラが続けた。
「何の進展だ？」ザヴァラが聞くと、ウォーロックが編み物に向けて顎をしゃくった。
「私のセーターの出来上がり具合よ」
ザヴァラが笑顔を見せた。空中のホログラムが消え、沈黙が訪れる。ザヴァラは編み針を指の間に滑り込ませ、たこで硬くなった指関節に添えた。
Kから目印へ、K1P1リブ編み、M1R、K、M1L、P1K1リブ編み、Kから目印へ。彼の思考は再びパターンに満たされていった。イコラならこの色を気に入ってくれるだろう。