Destiny2 デスティニー2 まとめ Wiki

「しかし、この永遠なるものの有様を地上の血と肉あるものに聞かせることはできないのだ」

シティは心地良い夜に包まれていた。柔らかい風が街中を吹き、木々を揺らしてセミの合唱を運ぶ。こういう夜は、どれだけ不眠症に悩む者でも静かに朝まで熟睡することができた。目を閉じ、仰向けになり、深呼吸すればいいだけだ。
ただ、ザヴァラを除いて。彼は、こういう夜には庭を散歩したくなる。「深夜の散歩ほど素敵なものはない。そう思わないか、タージ？」肩の上を飛ぶゴーストに向かって彼は静かに語りかけた。
タージはそよ風の中で静かに揺れた。彼に言わせれば、特に窮地に陥った司令官にとっては、8時間熟睡するほうが遥かに良いと思っていた。だが、主人に助言をすることが使命であると考えているゴーストもこの世にいる一方で、彼はそうは思わなかった。ゆえに何も言わなかった。
それでも、彼の否定的な考えは相手に伝わっていた。「分かってる。休むべきだな」ザヴァラは目を閉じて息を吸った。夜の空気が花の香りと雨が降った直後の土の匂いを含んでいる。「だが、これにも意味があるんだ」
まだシティに野営地だけがちらほら目立っていた頃、この土地が初めて植栽のために掘り起こされた時のことをタージは思い返した。厳しいパトロールから戻ってきたばかりだったが、ザヴァラは他の者たちが地面を掘っているのを見るやいなや、武器を放ってスコップを握った。
サラディンは彼に対して休息と回復の重要性をとうとうと語ったが、彼は言うことを聞かずにそのまま掘り続けた。「私だって人生で一度くらいは命を生み出したいんだ」と彼は言った。タージは未だにその瞬間の、誇りと怒りの狭間で揺れる鉄の豪傑の表情を思い出すことができた。その後すぐ、彼もスコップを拾った。
「長い道のりだった」今のザヴァラがつぶやく。「多くのものを犠牲にした」
タージは口を閉ざしたままだった。確かに彼に言うとおりだ。彼らが木の下を通ると、枝の間に潜んでいたセミたちが鳴き止んだ。数秒だけ、砂利道を踏みしめるブーツの音だけが聞こえた。ザヴァラとタージが数十メートル離れると、セミたちが合唱を再開した。
「ここまで生き延びることができたことに、時々驚きすら感じる」ザヴァラは空を見上げると、上空のトラベラーの真っ白な光が彼の瞳に映る。「お前のおかげだ」彼は穏やかな声でそう言ったが、何かを訴えているのか、感謝の気持ちを込めて言っているのか分からなかった。
タージもトラベラーのほうを見上げた。彼に何が言えるだろうか？ 自分のガーディアンを蘇生することが彼に与えられた使命だった。それ以上に、それが彼の存在意義だった。彼が選んだわけではない。だが、それはザヴァラも同じだ。
さらに深い沈黙が流れた。ゴーストとガーディアンは不透明な月を見つめ、同じ問いを抱えていた。
「我々を見守っているのか？ それとも、我々は孤独の身なのか？」