倒すべき相手を倒す術は、あまりにも多くある。
復活した最初の夜、ケイド6は自分を殺した男を見つめていた。 彼がユルドレンとして知っていた王子はケイドに背を向けて柔らかい草に寝そべり、腕を枕にして星のない空の下で眠っていた。そこは、ガラス玉のように散りばめられた花崗岩の間を長草草原が縫うようにして生い茂る、彼らが到着した瞬間に創られた安全で静かな谷だった。地球の周期がないこの場所では、時の流れが油のようだった。そして、何時間もの気の引けた会話やぎこちない質問の末、ついに相手が休養を理由に会話を断ったのだった。 ユルドレンは無防備にぐっすり眠っている。 ふたりを隔てる炎の影に隠れかかったケイドは岩にもたれかかり、腕を組んでいた。暗く、野性的な衝動がケイドの中を駆け巡った。 ほんの一瞬でできることだ。 ゴーストを一撃で仕留め、即興で長草のしめ縄を用意して、あの男の目から視線を逸らさずに絞め殺す。 それか、ゴーストを素手で握り潰し、優位な立場から仮眠する奴を見下ろす。彼を殺した者の目線で自分の死を追体験する。 いや、もっといい考えがある。ゴーストを捕らえ、男を逃がす。そして奴を地の果てまで追い続け―― ケイドが身を震わせて視線を上げると、彼を殺した者のゴーストが、消えそうにちらつく炭の明かりに照らされ、宙に佇んだまま微動だにせずに、何かを庇うような体勢で彼を見つめていた。 ケイドが目を細め、その手がゆっくりと銃に向かう。 ゴーストとエクソが互いを見つめ合う。ゴーストの真下では、男がわずかに動いたが、目は覚まさなかった。 そして、ゴーストは滑らかにそのガーディアンの横を通り過ぎ、静かにケイドの目の前まで近づいた。 「サンダンスのこと、本当に残念です」ゴーストが囁いた。 その名前にケイドは動きを止める。彼は両手と視線を落とし、羞恥心のあまりに地面から目を離せなくなった。 「どうも」ケイドはその言葉だけで精一杯だった。 その時、神の中にある草の上で眠る男がユルドレンとは全くの別人に見えた。 クロウだ。ケイドは自分に言い聞かせる。 あれはクロウなんだ。
※計算式不明瞭につき大雑把な値です
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