Destiny2 デスティニー2 まとめ Wiki

痛みを忘れ、練習を忘れ、ダンスシューズの下にある水ぶくれを忘れるんだ。観客が待っている。

理学修士のラシダ・アブ・オワィンが現場用レコーダーの電源を入れる。レコーダーは鞄の紐に取り付けてあるため、彼女は胸を軽く叩く必要があった。
稜線の上に立つ金属とガラスでできた物体は機械的なぎこちなさで自分の胸にあたる部分を叩く。
彼女はペンの先で頭を掻く。物体は頭蓋骨の下部の尖った部分を掻く。「頭蓋骨のような構造」だ。ラシダは自分に言い聞かせる。
物体の背丈は彼女より高く、成体のエリクスニーより低い。二足歩行で、二本の腕を持つ左右対称の存在だ。光の線が頭蓋骨様構造を二分しており、その青白い輝きは中央部のガラスよりも明るい。彼女が中身をよく見ようと身を乗り出すと、それはまた彼女を模倣し、扇状の突起が光を反射させる。
ラシダは自分の挙動のひとつひとつを意識しながら、頭をレコーダーに近づける。「調査が必要な新発見」彼女はレコーダーにつぶやく。「知性を有すると思われる機械もしくは生体機械。腹部側面には何らかの発光物質で満たされた透明な窓がある。中身は液晶あるいは動力源と思われる」
ラシダは水耕栽培システムの設計と保守が専門の機械エンジニアだ。彼女にはケプラーにおける第2の非人間種族と思われる物体との初接触を試みる適性がまったくない。
「言語学者が必要だ。人類学、生物機械学、プログラミングの専門家が。聖なる異常現象よ、どうか我々をお助けください。進化生物学者の助けがいる」
物体はゆらゆらと揺れながら一歩前に踏み出す。ラシダはそれの全身を見つめる。
彼女が物体の動きを真似て一歩前に踏み出すと、それは彼女を指さした。彼女もそれを指さし、それから自分自身をさして反応を待った。
ラシダには専門家が必要だったが、そこにいたのは彼女だけだった。
「仮説、検証、反復」彼女は自分を落ち着かせるように祈りをつぶやく「アーメン」。