Destiny2 デスティニー2 まとめ Wiki

皮を脱ぎ去り、新たなものに生まれ変わるのだ。

エカースクは、通りを横切ってスパイダーのバーに向かうエイドを眺めていた。若い書記官は巻物のような謎めいた物体を胸元に引き寄せたまま、こっそりと背後を確認している。
ケルの娘は秘め事をするのが実に下手くそだった。エカースクは彼女のそんなところが愛らしいと思っていた。
彼は彼女に話しかけることができればと思った。何事もないかのように歩き、深呼吸をすること。愉快で当たり障りのないことを考えること。だが、彼はそのような助言をする立場ではなかった。
近くにある組み立て途中のパイクの下から不愛想なさえずりが聞こえてきた。「エカースク、電圧テスターはどうした？」
エカースクはハッとした。そして要求されていた装置を下腕に持ったままだったことに気がついた。
回収された乗り物の下から滑り出てきたクリフィクスは、顎の近くに生えている細い毛を逆撫でた。彼が苛立っているときにする癖だ。
「お前は3つの目で作業ができるほど賢くはないだろう」クリフィクスが皮肉を込めて言った。
エカースクは電圧テスターを師匠に手渡した。「すみません。少し気を取られてしまって」
老獪なクリフィクスは見習いエンジニアの不注意の原因を嗅ぎ取っていた。「ケルのケッチの中にあるものに気を取られたわけじゃないだろうな」彼は何かを仄めかすかのように顎をカチカチと鳴らした。
「違いますよ」エカースクは用心深く答えた。「人間の柔らかい甲殻が気持ち悪いなと思っていただけです」
クリフィクスは疑り深そうにさえずった。「人間であろうがなかろうが、そんなことは考えるんじゃない。お前が誰かの気を惹けるほどのエンジニアになるにはまだまだ勉強不足だ。だからさっさと導管リーマーをよこせ」
エカースクは同意するように首を振った。彼は今はまだしがないドレクだ。だが彼は学を積み、脱皮し、いずれは好きなときに好きなことを言えるほどの人材になろうと決意していた。
だがその日が来るまでは、彼はエイドの謎めいた秘密を守りながら、言葉に出すことのできない真心を彼女に捧げるのだった。