「その重荷を分けてくれ」
ピラミッド艦のシルエットが刻まれた1枚の翡翠のコインがある。「踊り続けろ」ナインの使者の声は放浪者の耳に残り続けた。その声は、かつてオリンのものだった。H.E.L.M.の船橋に立つ彼には船の稼働音もナビフレームの話し声も聞こえていない。聞こえてくるのは――「そのひそめた眉がお前の本心をさらけだす」エリスが窓の前に立つ放浪者の傍らに移動した。ふたりのくすんだ鏡映はトラベラーの側面にある三角の傷跡から流れ出る赤紫の光に圧倒されていた。「ああそうかい」放浪者が不平を言い、指の上でコインを転がした。「だからお前は眉を隠してるのか?」彼は不安を隠すようにニカッと笑った。「違う」エリスが放浪者の手を取る。彼の拳にたこで硬くなった指が触れる。彼は一瞬だけ体を強張らせたが、指の感触にリラックスした。彼女は器用に彼の手のひらからコインを摘まみ上げ、興味深そうに見つめた。コインを持っていないと体が軽くなったように感じる。「難解な答えになっていない答えの象徴をずっと抱えていても役には立たない」そう言い、彼女はコインをポケットにしまった。放浪者が方眉を上げる。「何か他に抱えるべきものでもあるってのか?」エリスは反射する彼の表情を見ていた。「ある。一筋の月光。それだけだ」
※計算式不明瞭につき大雑把な値です
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