Destiny2 デスティニー2 まとめ Wiki

覚えるために話し、忘れるために話す。

「カードによって真に未来を予測することなどできない。見解しか示されないのだ」エリスは言った。彼女はエイドと共に占術テーブルの前に立ち、カードを1枚ずつ意図的に並べた。「何か考察があれば聞かせてほしい」
エイドは返事をせず、肩越しに研究施設の中央にある儀式陣を眺めていた。エリスは続けた。
「シヴ・アラスの動機に関するお前の洞察のおかげで悲劇は免れた」彼女の注意を引こうと、エリスが言った。「マラ女王に警告し、ラスプーチンに彼の過ちを見せることができた」
エイドはテーブルを見下ろしながら頷いた。そして爪の先で、アドヘレントのカードと隣接するカードの角を揃えた。
「聞きたいことがあるのだろう？」エリスは長い沈黙の後、聞いた。エイドが思いついたことを質問しないことなど今までに一度も無かった故、書記官らしからぬ躊躇は意外なものであった。
「ええ」そう言ってエイドは黙り込んだ。再び口を開いたとき、それは囁くような声だった。「ここで...起こるの？ あなたの...変容は」
その最後の言葉が緊張で歪んだ。
「ああ。ルーンが最も強力な場所だ」エリスが冷たく答えた。「この場所と、ウィッチ・クイーンの秘密地下牢だ」
エイドは頷いた。
「その言葉は古い人間の言語ね」エリスはエイドの声にいつもの陽気さが少しだけ戻るのを感じた。「語源は『忘れる』ことを意味するはず」
「ああ、その通りだ」

「それと...」そう言うエイドの喉には質問がつっかえていた。「自分が誰だか... 忘れることはあるの？」
エリスが深呼吸をした。共に研究するうちに、エイドは率直にものを言うことができるようになっていた。
「いや」エリスが言った。「私はいつでも私だ」
エイドは目を見開いた。沈黙が続いた。質問も好奇心もなく、ただ話すことを恐れる者の瞬きをすることのない視線だけがあった。
「恐れることは何もない」エリスは慰めになるか分からずに言った。エイドはうなずいて視線を逸らした。
「ええ」書記官が答えた。「恐怖心はない」
エリスは、他の者たちは彼女よりも上手く嘘をついたのだろうかと考えた。