「こんなのは初めてだ」――バンシー44
「仕事にうんざりしてしまうことはないの?」とエヴァ・レバンテが尋ねた。バンシー44は作業台から視線を上げる。エヴァがバザーへ行き来するために彼の店の前を通ることは多く、通りがかったついでに声をかけてくるのもまたよくある光景だ。さて、この会話の話題は以前にしたことがあっただろうか――彼は一瞬考える。だが仮に忘れていたとしても、エヴァのことだ。思い出せないことを恥ずかしいと感じてしまうのではと、こちらを一方的に気遣い、そのまま何事もなかったかのように振舞う可能性がある。「それはない」バンシーは努めて誠実に答えた。「俺は記憶力があまり良くない。どの銃も初めて見たかのように思える」エヴァは頷きながら、自分の手に持っていたカップから茶を啜った。「いつもガーディアンたちがあなたの元に部品を持ち込んできて、あなたが同じ銃を何度も組み立てているのを目にしてきたものだから、つい。彼らはあなたの提供する物に満足していないのかしら?」バンシーは小さく笑った。「かもな」。彼は作業台に身を預け、ショップ内に散らばる多種多様な武器用パーツを見る。「いま思えば、夏季の宴にも少し通じる話ではある」その一言にエヴァが興味を示す。「そうなの?」彼女は片方の眉を上げて尋ねた。「ガーディアンは分解した武器の欠片、そのスクラップを持ち込んでくる」バンシーは説明する。「俺はそれを新しい何かに変える。必ずしもガーディアンの期待どおりとは行かないが、希望を胸に抱きながら、めげずに部品を俺の所に持ち込んでくる」エヴァは笑顔を浮かべた。「やりとりは同じなのに、結果が違う」「ああ。そう言えなくもない」「素敵ね」エヴァは明るく言う。彼女は挨拶代わりにバンシーに向けて杯を掲げ、広場へ戻っていった。「今の話題は前にもしたな、確実に」と、バンシーは独り言ちた。だが何度しても、彼がうんざりすることはなかった。
※計算式不明瞭につき大雑把な値です
最新の20件を表示しています。 コメントページを参照 画像を非表示
最新の20件を表示しています。 コメントページを参照 画像を非表示