Destiny2 デスティニー2 まとめ Wiki

わずかな信頼で全ては回る。

放浪者は『エーテルタンク』のバーカウンターに体をあずけ、朝の賑わいを眺めていた。ケルが不在の街では、ゆっくりと一日が始まる。入り組んだ岸辺の元バロンは夜のほうが好きだった。スパイダーはこんなに早く目覚めることを好まない。
「つまりだな」スパイダーは、その威圧的な視線の下に立っていた痩せたエリクスニーに向かって、声を荒げて言った。「ミスラークスが影の軍団の囚人を助けるのに忙しいから、お前らに少しでも有益な仕事を見つけてやるのが俺の仕事になった。理解できるか？」
エリクスニーは声を漏らし、体を震わせた。
「無礼はよくないぞ、スリシクス」スパイダーは放浪者に合図しながら言った。「会話から友人をのけ者にするのはよくない」
放浪者が何か言う前に、ドレッグが返事をした。「スリシクスは人間の言葉を知っている。スパイダーは何を求めている？」
その声は嘲りに満ちていた。スパイダーの顔に驚きの表情がよぎった。
「上手いものだな」スパイダーの礼儀正しい返事にはどこか不自然さがあった。「一体どこから学んできたんだか」
スリシクスは何も言わない。スパイダーは続けた。
「さて、俺が何を求めているかってことについてだが… エラミスのハウスから来たそうだな。秘密は高く売れるんだ。スパイ活動の場合はもっと儲かる」
スリシクスは拳を胸の前で押し合わせ、腕を素早く後方に引いた。
「スリシクスはあなたのことを知っている。入り組んだ岸辺のスパイダーだ。スリシクスはスパイダーに興味はない」
放浪者は笑った。スパイダーは体を倒し、呼吸器が低くしわがれた音を立てた。
「もう一度言ってみろ」
スリシクスは身じろぎもせず、視線も逸らさなかった。緊張の糸が張り詰めていた。
「聞こえただろう」しばらくして放浪者は言った。「興味がないんだってよ」
スパイダーが息を吐いて椅子に座ると、放浪者がスリシクスを外に連れ出した。
「君も見たとおり」放浪者は声を抑えて言う。「スパイダーはこのチャリティを使って、より多くの者を自分の仲間にしようとしてるんだ。エイドから彼を見張ってろって言われてね。それからもう一つ、言われていることがある。君が子供の扱いが上手いと」
スリシクスが黙ったまま混乱しているので、放浪者は話を止める。
「幼子だよ！ 毛布に包まれながら笑顔を見せる、食べてしまいたくなるほど可愛い幼子たちのことさ」
混乱が恐怖に変わった。
「ああ、単なる言い回しだよ。古い地球の言葉だ」放浪者が説明した。「とにかく、EDZからはたくさんの孤児がやってくるから、書記官は手が離せないんだ。エイドは、先日君が彼らの面倒を見たと言っていた。一緒に歌を歌っていたってな。本当か？」
「ああ。スリシクスは幼子が好きだ」エリクスニーが言った。放浪者はニヤリと笑う。
「よし。彼らから好かれるといいな、先生」