Destiny2 デスティニー2 まとめ Wiki

落ちたバラの花びらのような血の斑点で飾られた姿が見える。勝利して光を浴びているお前の姿が見えるのだ。

アリーナの光景に夢中になっていた若きカイアトルは、チディクを握っていることも忘れて、眼前で繰り広げられる動きを模倣していた。手に握る生きたアクセサリーは悲鳴を上げ、敷石に飛び降りた。骨の有無は定かではないが、チディクは首を傷めて憤慨していた。
「落ち着け、小さき者よ」彼女の父親がワインの煙越しにたしなめた。「お前のチディクは、その服に見合う姿になるためにいくつもの世代を経てきたのだ。大事にしろ」
「なぜ？ 私には必要ない」
「皇女と同じように、他の獣にも役目というものがある。その服が小さくなったら、そのチディクも好きにすればいい。食ってもいいぞ。ワインと苦い香草で煮ると旨いからな。だが今は…」
「分かった」と彼女は声に出して言ったが、その視線はゆっくりと再び眼下の赤い砂に引きつけられていった。ガウルは、すでに潰れて体からは引きちぎられた対戦相手の頭を持ち上げると、それを皇族たちの座席のほうに向けた。その戦士の全身の筋肉は興奮と勝利に震えていた。
「実に見事な戦いぶりだ」カルスは立ち上がった。「今夜の食事に招待しよう」
その瞬間、彼女はガウルならチディクを身につけてはこないだろうと分かった。彼は、香りや軽快な音を出す美しい尻尾を持つ弱々しい装飾品などで自分を飾り立てる必要などないのだ。誰にも気付かれないように動物の小便を片付けさせるために、洗練された動作で従者を呼ぶ方法を学ぶ必要もない。彼の手は掃除係を呼ぶ方法ではなく、剣の扱い方を学んできたのだ。
彼女は憎しみに満ちた手で震えるその動物を拾い上げた。そして、その腹部を握り締めた。チディクは混乱に目を見開き、息を吸おうともがいた。だが次の瞬間、彼女は力を緩めた。この獣には罪はない。彼女が己の立場をどう思おうとも同じことだった。
だがチディクとは違い、彼女は自ら新たな目的を持つことができた。